AIエージェントを試してみたいものの、どの仕事から任せればよいのか分からない。導入を検討する企業では、そんな迷いが起きやすくなっています。
時間がかかっている仕事を、そのままAIへ渡せばよいわけではありません。手順が担当者の頭の中にしかなかったり、正しく終わったかを確かめる方法がなかったりすると、AIが作ったものを人が毎回直すことになります。
OpenAIは2026年9月1日、AIを日々の業務へ組み込んでいる海外企業として、Basis、Clay、Exaの3社を紹介しました。本記事では、3社がAIエージェントをどのように使っているのかを整理したうえで、日本企業が導入前に考えておきたいことを検討します。
この記事で分かること
- 海外3社がAIへ任せた具体的な仕事
- 3社の共通点と相違点
- 公表された効果と、まだ分からないこと
- 日本企業が最初の対象業務を選ぶ確認項目
今回取り上げる3社
会計業務向けのAIエージェントを開発。社内では、入社初日の案内や初期設定にAIを利用しています。
営業活動に必要な企業・顧客情報を扱うプラットフォームを提供。複数のツールに散らばった案件情報をAIが整理します。
AI向けの検索基盤を開発。検索APIを組み込める機会の調査やコード変更案の作成にCodexを活用しています。
3社の事例は、OpenAIが公開した記事に基づいています。削減時間などの数値も各社およびOpenAIの説明によるもので、第三者による効果測定ではありません。
| 企業 | AIへ任せた工程 | 人が残した判断 | 公表効果 |
|---|---|---|---|
| Basis | 入社案内・初期設定 | 例外時の手順更新 | 2時間→30分 |
| Clay | 営業情報の収集・整理 | 顧客対応と優先度 | 約1時間短縮 |
| Exa | 調査・コード変更案 | テスト・レビュー・公開 | 定量値は未確認 |
Basisは、入社初日の案内を繰り返せる仕事に変えた
新しく入社した社員には、社内ツールの使い方や必要な設定、仕事を始めるまでの手順を説明しなければなりません。Basisは、この入社初日の案内を、社内で繰り返し使える手順として整理しました。OpenAIの記事によると、初日のオンボーディングにかかる時間は2時間から30分に短縮されたといいます。
この仕事がAIに向いていた理由は、単に繰り返しが多いからではありません。何を説明し、どの設定が終われば完了なのかを言葉にしやすく、例外が見つかれば次回までに手順を直せます。
Clayは、散らばった営業情報を翌朝の判断材料にした
営業担当者が顧客とのやり取りを把握するには、CRMだけでなく、メール、Slack、通話記録など複数の場所を確認する必要があります。Clayでは、AIエージェントが夜間に各所の情報を確認し、翌朝、対応が必要な案件を担当者へ提示します。
ただし、AIが営業判断をすべて代行しているわけではありません。顧客へ何を伝えるのか、どの案件を本当に優先するのかは担当者が決めます。公開記事だけでは、約1時間という短縮値を何人で、どの期間に測ったのかまでは分かりません。
Exaは、テストで確かめられる開発作業を任せた
Exaは、自社の検索APIを利用できそうな機会を探し、関連情報を集め、コードの変更案を作る工程にCodexを使っています。AIが変更案を作った後は、テストと人のレビューを通します。公開や外部への提案までAIだけで進める運用ではありません。
ソフトウェア開発では、変更前後の差分が残り、テストが成功したかどうかも確認できます。AIの能力だけでなく、成果を確かめる仕組みがあるかどうかが重要です。
WHAT THE THREE CASES SHARE
3社に共通していたのは、AIの性能より仕事の設計でした
説明できる
決められる
結果を確かめる
日本企業が最初の対象業務を選ぶなら
最初から大きな業務全体を自動化するより、結果を確認しやすい一部分から始める方が安全です。入社時の社内案内、営業会議前の案件整理、公開前に人が確認できる資料の下書き、テストを実行できるコード変更などが候補になります。
- 開始条件:いつ、何をきっかけに始めるか
- 入力情報:どの資料・システムを使うか
- 完了条件:何ができれば終了か
- 確認者:誰が、どの基準で結果を見るか
- 戻し方:問題時にどこまで戻すか
作業時間だけでなく、人が確認する時間、やり直しの回数、利用料金、問題が起きた件数も記録します。AIの利用回数が増えても、人の確認が増えていれば、業務が軽くなったとは言えません。
EVIDENCE & SCOPE
今回の事例から、まだ分からないこと
日本企業が同じ仕組みを導入した場合の期間、費用、削減効果までは確認できていません。導入途中の失敗や、日常的な保守にかかる時間も公開情報だけでは判断できません。
GLOBAL AI BRIEFでは今後、Miraigentで小規模な検証を行い、準備時間、人の確認量、失敗例、停止・復旧の方法まで記録します。
よくある質問
定型業務から任せればよいですか
定型であることだけでは不十分です。入力情報、完了条件、確認者、停止方法まで決められる小さな工程が向いています。
効果は作業時間だけで測ればよいですか
いいえ。人の確認時間、やり直し回数、利用料金、問題件数も合わせて見ます。
海外3社と同じ効果を期待できますか
現時点では断定できません。自社では小規模に試し、同じ指標で導入前後を比較する必要があります。
まとめ
海外3社に共通していたのは、高性能なAIを導入したことだけではありません。仕事の手順を説明でき、必要な情報を渡せて、結果を確かめられる状態を先に作っていました。
最初に任せる仕事を選ぶときは、工数の大きさよりも、仕事の進め方と確認方法を説明できるかを確かめる必要があります。小さく試し、人の確認時間まで含めて効果を測ることが、継続して使える仕組みを作る第一歩になります。
出典
- OpenAI, How AI-native companies turn workflows into operating capability
- OpenAI, Enterprise Signals
- OpenAI, From assistance to execution
初回公開・最終更新:2026年9月2日
検証範囲:OpenAIの公開記事、各社公式サイト、公開された企業利用データ
未検証:日本企業での導入期間・費用・削減効果、各社公表値の独立測定
著者
GLOBAL AI BRIEF編集部
海外AIの最新動向を、日本企業が判断し、実行できる情報へ整理するMiraigent運営の専門メディアです。確認できた範囲と、まだ分からない範囲を分けてお伝えします。
